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介護現場のリアルと徹底的に向き合い、ユーザードリブンで課題解決を推し進める——Rehab for JAPAN CPO×PdM 対談

「社内にはユーザー軸でものごとを考えるカルチャーが醸成されている」。Rehab for JAPANのカルチャーについて、CPOの若林一寿(写真・左)はこう話します。介護現場の業務を効率化し、高齢者が自分らしく生きられる世の中を作る。それを実現するプロダクトを生み出すために、PdMの今吉亮輔(写真・右)が大切にしているのは「粘り」。プロダクトリリースに向けた取り組みや現場への想いを、2人に語ってもらいました。

介護の現場をよくして、高齢者を元気にしたい

——はじめに、2人がRehab for JAPANに入社したきっかけを教えてください。

若林:私は新卒でシステムコンサルティングの会社で業務システムのエンジニアとして従事したあとリクルートに転職し、開発ディレクターや企画職を経て、プロダクトデザインやUXデザインに携わるようになりました。

BtoC、BtoBのプロダクトデザインを手がけるプレイヤーから始まってマネージャーに、最後はデザイン部門の役員職として人材採用や育成に関わっていたのですが、自分の中でスキルの仕上がり感を感じるようになって……。

そこで、40代の青春を過ごす場所を探そうと持って人生相談に乗ってもらったのが、現在のRehab for JAPANのCOOである池上でした。池上はリクルート時代の私の上司で、プロダクトマネジメントとUXデザインをたたき込んでくれた師匠です。2人で会って飲みながら話をしていたのですが、まだ条件についても聞かないうちにこの会社に入りたいと即決してしまったんです。

池上が言うには、「高齢者の方は目標や希望を持っている。介護の現場で効果的なリハビリを提供することでその目標を叶える。それが介護業界なんだ」と。私は漠然と「介護業界は大変そうだな」としか考えていなかったので、その視点は発見でした。と同時に、他界した義父のことを思い出し、感情移入してボロボロ泣いてしまったんです。

「元気なおじいちゃんおばあちゃんを増やしたいんだ」という池上の話を聞いて、バチッとスイッチが切り替わりましたね。

今吉:新卒で入社したリクルートで、上司になったのが若林でした。リクルートではUXディレクターやPdMの仕事に従事して、その後PayPayに転職。決済サービスの新規立ち上げなどを経験しました。PayPayではリリースしたサービスがいっきに広がるという経験ができたのですが、「もっと肌感のあるサービスを作りたい」と思うようになったんです。

目の前で喜ばれるサービスを作りたい。そう考えていたときに、当時Rehab for JAPANに参画していた若林から声をかけていただきました。話を聞いて、介護事業所の理学療法士さんや看護師さんの課題はものすごく明確で、それを解決するためには業界の知識とUXデザインの力が必要だと感じたのです。

同時に、自分の父親の介護を経験して、母親もいずれそうなると思ったときに、介護の現場をよくしたいと思いました。Rehab for JAPANの当時の環境と自分自身が持っていたスキル、当時やりたかったことがすべて合致していると感じて、参画を決めましたね。

現場のリアルな課題を網羅的に洗い出す

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——Rehab for JAPANに入社するきっかけの1つとして、それぞれ介護の実体験があったんですね。現在は、どんな業務をしていますか?

若林:私たちは、デイサービスの介護事業所向けに、「リハプラン」というリハビリを支援するSaaSのプロダクトを提供しています。リハプランには、高齢者一人一人の生活課題や身体能力からその人に応じたリハビリプログラムを自動提案したり、リハビリに関する国への報告資料の作成を支援したりする機能があります。

弊社で調査した結果によると、大規模なデイサービスの事業所だと1ヶ月で文庫本1冊分ぐらいの手書き仕事が発生すると。そうした手作業でしている業務をデジタルに置き換えて効率化し、現場でよりよいリハビリを提供できるようなプロダクトを新規でどんどん立ち上げています。

そういったプロダクトを開発する過程で、私たちはプロダクトマネージャー兼UXデザイナー兼Webディレクターの三役を担っています。

今吉:介護事業所は、作成したリハビリ計画書に従ってサービスを提供しているかどうかを記録をして、国に報告する必要があります。

介護現場では、この「記録を転記する作業」が大量に起こっています。たとえば、利用者さんがデイサービスに来たときの出欠の管理、送迎の管理、健康状態の管理。健康管理では体温や血圧、脈拍、体重を測る必要があります。そのうえで、どんな訓練を提供したかを記録します。

これら記録した情報を、ご家族への連絡帳や利用者の日別管理シート、請求書といったさまざまな書類に転記するのです。こうした現場の業務負荷を取り除こうというのが私たちのプロダクトです。

——プロダクトの機能拡張をする際、具体的にはどんなプロセスを踏むのでしょうか。

今吉:たとえば、先ほど挙げた記録業務は複雑なので、現場の業務を深く理解する必要があります。そのため、事業所を訪問して実際はどんな業務をしているか、観察させてもらっています。

一例を挙げれば、看護師さんの頭に1ヶ月間カメラをつけて業務内容を録画、その動画を解析してふだんどんな業務をしているのか把握します。

それに加えて、前職で介護士をしていた弊社社員に話を聞いて足りない情報を補完し、業務一覧を網羅的に洗い出します。

それらをもとに、それぞれの業務がどれくらいの頻度で行われているか、どれくらいの人がその業務に携わっているかといった情報から「何をプロダクト化するか」を優先付けして機能一覧を作っていきます。

実際にプロトタイプができたら社内の介護士にUXのレビューをしてもらっています。

たとえば、転記作業が多いという課題があり、それを解決する機能追加をするとその転記作業はなくなりますよね。しかし、転記作業が何か別の目的でもされている場合、転記作業自体をなくされたら困るということもあるでしょう。

現場の業務を理解しているメンバーが参画していることで、業務全体の整合性を踏まえたレビューをすることができます。


若林:機能拡張については、カスタマーサクセス部(以下、CS)に集まってくる現場からの要望や、社内で構想はあってもまだ提供しきれていない機能の中から優先順位をつけて設計をしています。

ユーザーの業務にフィットした形で設計をしたら、そこから先は少人数でスクラム開発をしていきます。今後2週間でどういう課題に対して何をするかプランニングして、エンジニアと一緒に細かい機能を詰めて開発し、テストしてリリースします。

私がオーダーしてエンジニアが作るという一方向の関係性ではなく、基本の要件を提示したうえで、事業所のユーザーにとってはどうするのがよいかを提案してもらう。セクショナリズムがはっきりしているわけではなく、いい改善、いい機能にするためにみんなで意見を出し合って進めています。

社内ではユーザー軸でものごとを考えるカルチャーが醸成されているので、意見を集約しやすいですね。

介護現場の生の情報にもとづいて、ユーザードリブンでプロダクトに向き合える環境がある

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——プロダクトを作っていく過程で若林さんと今吉さんが大切にしていることは何でしょうか。

若林:一番大切にしているのは「三方よし」になることですね。まず、ユーザーにとってよいのは当たり前。そして、ユーザーにとってよいということは、高齢者の方にとってもよい。また、ユーザーに喜んでいただけるプロダクトを提供することで、Rehab for JAPANとしても対価をいただき事業を成長させることができます。

そんな中でも、軸足はユーザーに置いています。ユーザードリブンでありながら、弊社の事業成長という観点も大事にする。これが前提としてありますね。

今吉:私は「粘る」ことをものすごく大事にしていますね。たとえば、今進めている企画に対してこの事業所はほかと違うことを言うかもしれないと思ったときに、「小さい事業所だからあとまわしでいいや」にしない。その事業所について知っている人から一次情報を仕入れて、今候補に挙がっているこのパターン以外に方法はないんだろうかとしっかり向き合う。これを大切にしています。

こうした「粘り」を可能にするために、PdMとしてはチームのメンバーがフラットに意見を言える状態になるよう心がけています。たとえばCSなら「事業所について誰よりも知っている」、プロダクト部門だったら「現在の仕様に行き着いた経緯」といったように、みんなそれぞれ情報を持っている。困ったときにそうした情報を提供して助け合えるようにチーム作りをしておくことが大切なんです。

事業所には看護師、理学療法士、現場監督、そして利用者と、登場人物がたくさんいます。そうした方々の課題を拾い上げられる状態を作っておけるよう意識しています。

——「粘る」ことと「スピード感」のバランスはどのように取っているのでしょうか。

今吉:意識しているのはプロジェクト計画段階でのリスクの洗い出しですね。

私も若林も、これまでBtoB 、BtoCのさまざまなサービスを立ち上げてきた自負があります。経験が深いぶん、どんなリスクが起こりうるか先回りして「見える化」する視点ができているので、それをみんなに事前にシェアしておく。そうすると、リスクを想定した行動・開発設計ができます。また、リスクが顕在化した際に、チーム一丸となってそれを乗り越えるマインドが生まれるんです。

若林:いろんなプロダクトを経験して判断軸がたくさんできていますよね。ふつうの人が1週間悩むところ、1日で設計できる。粘り続けてきた結果、高速で多角的に考えるスキルが身についているんです。

判断軸を持っていることで、議論を集約させる方法も心得ている。意見がバラバラになってもユーザー視点に立ち戻れば1つに決まるというふうに、着地のさせ方についてもたくさん引き出しを持っているので、粘ることでスピードが落ちることはないですね。

——これまでプロダクトマネジメントに関わってきて、苦労ややりがいを感じたのはどんなときでしたか?

若林:介護業界は、介護報酬制度という法律が3年に1回見直されるんです。直近では2021年4月に改定が行われ、高齢者の自立支援を促すために科学的な介護を推進するという理念のもとリハビリの仕方や国への報告の仕方が変更されました。

科学的な介護推進については弊社は1丁目1番地にいるので、制度関係にはしっかりと対応しなければなりません。ですが、4月1日から施行される法律の確定情報が伝えられたのは3月に入ってから。リードタイムが非常に短かったのです。

介護現場の方々も戸惑っている中で、わかりやすいサービスを提供する。そのために新しい制度の内容を咀嚼して設計するというのを超短期間で対応しなければなりませんでした。チーム一丸、圧倒的な当事者意識でなんとか4月1日からリリースできて、デイサービスの方々から喜んでいただけたのでよかったですね。

今吉:私は苦労した記憶がないんですよね。

若林:今吉さんはもともといいプロダクトを作りたい欲求が強くて、そのために現場を理解するのは当たり前にするし、大好きですもんね。

今吉:そうですね。とはいえ、人づてに聞いたり本を読んだり、事業所のホームページを見たりするだけでは理解が進まなかったと思います。

事業所の方がどういうスピード感で業務をしているのかは理解が難しい。たとえば、同時に8人の温度を測って、その間に別の人の血圧を測っておいてチェックする。おじいちゃんが血圧計の電源を切ってしまって測り直しをする……。そんな一連の業務は、先ほど挙げた例のように看護師さんの頭に付けたビデオカメラの映像をみなければ想像もつきません。

介護の生の情報を仕入れて、情報を取りそろえた中でサービスを作っていける環境はRehab for JAPANならではでしょう。現場を理解して、それをプロダクトに反映できるのが楽しいですね。


高齢者が望む生き方ができるよう、中長期的な視点でプロダクトを考える

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——今後、どんな価値観を持った人と働きたいですか?

若林:やはりユーザー主語で「いいもの、いい機能とは何か」「どう作ればユーザーのためになるか」を議論できる方ですね。ユーザー軸は大切です。

今吉:Rehab for JAPANではこれからもいろんなサービスを作っていきます。その中では、中長期的な視点でものごとを考える力が必要となるでしょう。

サービスを単一で設計するのではなく、将来の介護現場について思考してデータベースを設計できる人。「いい介護」を実現するためにリハビリデータをどう溜めると分析しやすいか、将来を見据えて提案できるような人と一緒に働きたいですね。

この仕事はスピード感と安定感の両方を求められます。事業所の要望に素早く対応しながら、安定したプロダクトを作る。そのどちらも踏まえた行動ができる人であればなおいいですね。

——最後に、今後Rehab for JAPANでどんなことを実現していきたいか、目標を聞かせてください。

若林:私は高齢者の方が介護やリハビリをとおして、その人が望む生活が送れる世界を実現したいと思っています。

そのために、事業所で働く方々の事業作業といった業務を効率化して、高齢者に向き合う時間を増やしたい。そして業務効率化と同時にためることができたデータを利活用して、高齢者を元気にするための機能、プロダクトを提供していきたいですね。

その循環を回すことが弊社の目指すところでもあり、私が共感しているポイントです。そこに徹底的に向き合ってプロダクトを作っていきたいと思います。

今吉:自分の足で歩ける年齢をできるだけ長くできるよう、健康寿命を延ばしたいですね。そのためにリハビリを科学したい。科学するために、訓練情報や利用者の情報を負担なく記録できる。そんなサービスを作りたいと思います。

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